西遊旅譚
寛政6(1794)年版
司馬江漢著
天明8年、1788年4月23日から翌年4月までの1年をかけて、司馬江漢(しばこうかん)が江戸より長崎・平戸へ旅をした記録です。5巻でまとめられており、岩瀬文庫本はこれを1冊にまとめてつづったものです。巻1では江戸から東海道経由で鳥羽までを、巻2ではそこから下関まで、巻3が長崎、巻4が平戸、巻5では平戸を出て、京都からは中山道経由での帰路を著しています。なかでも3巻部分でのでは数日滞在したという長崎での唐人や阿蘭陀人の風俗やオランダ商館の内部に関する詳細な記述、4巻部分での平戸、生月島(いきつきしま)での捕鯨の見物や鯨についての記述には多くのページを費やし詳細に記しており特徴的です。作者の司馬江漢は西洋の腐食銅版画、いわゆるエッチングの技術を最初に日本に紹介したことや、平賀源内と接点があることから蘭学にも明るいことでも知られています。