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1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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子規居士十五周忌記念画帖
大正5〜6年頃

 ご紹介するのは、「子規居士十五周忌記念画帖」という、明治35年に亡くなった俳人、正岡子規の十五周忌に子規の友人や弟子たちが作成した画帖です。
 河東碧梧桐の俳句、中村不折の絵、内藤鳴雪の俳句、吉野左衛門の俳句と絵、高浜虚子の俳句、下村為山の俳句と絵、いずれも自筆の作品6枚と、これに子規が生前に根岸の自宅で描いた写生画8枚に、不折の絵2枚を加えた「根岸十景」の複製が貼り寄せられています。

 序文や奥付などはなく、発行の経緯や部数はわかりません。時折、古本市場に同じタイトルと装丁のものが出ることがありますが、これらを見る限り、中身の肉筆作品は一部ずつ異なるようです。

 即興的に、闊達な筆で書かれた俳句や絵からは、当時の俳壇や画壇で活躍した筆者たちの個性豊かな才能を見ることができます。なかでも、子規亡き後、子規門下の双璧とうたわれながら、五七五の定型に囚われず感情をストレートに表す新傾向俳句を唱えた碧梧桐と、伝統的五七五調と写生重視を主張した虚子は激しく対立してゆきました。

 碧梧桐の句「子規庵のゆすらの実 お前達も 貰うてきた」

 虚子の句「友は大官 芋掘ってこれを もてなしぬ」

ともに亡き師に思いを馳せながらも、それぞれの志向の違いは鮮やかに表れています。