書簡集
明治大正写
これは『書簡集』という明治大正期の著名人の手紙200通あまりを貼りこんだ資料です。差出人や宛名には、夏目漱石、谷崎潤一郎、岡倉天心、伊藤博文など、幅広い分野の人物の名が並びます。筆跡や文章にはその人の人柄や知性が表れると言います。歴史上の人物の書いた文字を見ることで、その人の生涯が、より実在感を持って感じられることがあります。
こちらは、大河ドラマ『坂の上の雲』の主人公、日露戦争で海軍参謀として活躍した秋山真之の手紙です。「智謀湧くが如し」と、その頭脳を称えられた知将は、一方で非常に豪快な性格だったといいます。たしかに、この筆跡にもその人柄が表れているようです。宛名は東京朝日新聞主筆の池辺三山です。「お手紙拝読。帰京後に一度お会いしたいと思っておりますが、多忙でかないません。閑を見てこちらから参上します」とあります。簡潔な文面からも真之の率直な人柄が伺えます。
こちらは、歌人の若山牧水が越前翠村に宛てた手紙です。牧水が創刊した雑誌『詩歌時代』が、創刊号だけで965円の大赤字、その後も毎号赤字だと嘆きながらも、「オットこれは内緒ごとなり。表面ケイキよし」と冗談めかしています。心を許した仲間同士で交わされる裏ばなしを知ることができるのも、手紙の面白さの一つです。