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1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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本草図説
江戸時代末期
高木春山筆

 こちらは「本草図説」という江戸時代に書かれた195冊にも及ぶ手書きの博物図譜です。「本草」とは、古代中国の薬草学にはじまる学問で、のちにあらゆる自然産物へと対象を広げ、それらの形態や性質を研究する博物学へと発展しました。

 この「本草図説」を制作したのは、江戸は目黒の本草学者、高木春山です。春山の本業は、多くの藩の御用達をつとめる裕福な商人でしたが、「日本の国をより豊かに強くするためには、この国で何が取れて、何に役立つかを知ることが肝心であり、そのためには優れた博物図譜が必要である」と考え、本書の制作を決意しました。時は幕末、日本が異国からの脅威を感じ始めた頃でした。

 動物、植物、鉱物から自然現象まで、当時の自然科学が扱う全てのジャンルを網羅し、春山の手書きによる図に、日本、中国、西洋の文献を引用した解説が添えられています。図の作成に当たっては、春山はできるだけ現物を入手して写生し、特定の地方にしかない場合は、遠方であっても現地へ出向き、また、現物の入手が難しい場合は標本を取り寄せました。外国の博物書をもとにしたものもあります。195冊に及ぶ写生図の一枚たりとも手を抜いたものはなく、その気迫に満ちた一枚一枚、一筆一筆が、春山の本草学に対する情熱と強い使命感とを私たちに伝えてくれます。

 こうして、多くの労力と財力をつぎ込み、20年余りも制作に打ち込んだ春山でしたが、黒船来航が翌年に迫る嘉永5年(1852)、道半ばにして亡くなり、本書は未完成に終わりました。完成していれば、おそらく200冊を超え、量、質ともに江戸時代の本草学の到達点を示す、史上最大級の博物図譜になったことは間違いありません。