後奈良天皇宸翰般若心経
室町時代後期
紺色の紙に金泥で罫線を引き、般若心経を書写したもので、奥書に「参河国」と記される。宸翰(しんかん)とは天皇の自筆の文書という意味で、このお経は国の重要文化財に指定されています。
1526年から1557年に在位した後奈良天皇が諸国での悪疫の流行や争乱の頻発、大飢饉による人々の困窮を憂いて、諸国の平安と人々の安寧を祈念し、自ら般若心経を書写し諸国の一宮に奉納したものです。24カ国に奉納したと伝わっていますが現存するのは、三河のほか、肥後、周防、甲斐、越後、伊豆、安房の6カ国が知られるのみである。
さて、この三河国1巻、なぜ、岩瀬文庫が所蔵しているのでしょうか。
京都、寺町の書店、佐々木竹笣楼(ささきちくほうろう)が手紙で「一、金五円 紺紙金泥般若心経 全十九行 右筆者未詳ナレドモ頗る上代能書、奥ニ参河国トアリ 何カ歴史的傳説アルモノナラント存候」と売り込んできたものを弥助が購入したものです。
こうして、今日三河国に落ち着いているというのも何かの縁でありましょう。