江戸流行料理通
天保6(1833)年刊
享保2年、1717年に創業、新鳥越2丁目、今の台東区今戸2丁目、東浅草1丁目付近に所在した江戸を代表する料理屋である八百善。ここは幕末にかのペリーの接待の料理を受け持ったことでも知られています。その四代目主人である栗山善四郎(くりやまぜんしろう)が書肆甘泉堂(かんせんどう)和泉屋市兵衛(いずみやいちべえ)の求めに応じて著した料理本です。初編は文政5年、1822年、2編が文政8年、1825年、3編が文政12年、1829年、4編は天保6年、1833年に刊行されました。岩瀬文庫の所蔵品はこのうち最後の4編を刊行した天保6年の段階で2編ずつをひとまとめにして刊行されたものです。序には蜀山人と号した太田南畝(おおたなんぽ)、亀田鵬斎(かめだぼうさい)など、挿絵には谷文晁(たにぶんちょう)や酒井抱一(さかいほういつ)、葛飾北斎(かつしかほくさい)など当時の一流文化人が多数参画した豪華なものになっています。
その内容は、初編、2編が本膳料理、3編は精進料理、4編は普茶卓袱(ふちゃしっぽく)料理になっています。献立の題目が中心で料理のレシピについてはあまり細かいところまで触れられてはいませんが、当時、この料理茶屋ではどのようなものを供応していたのかを知る手がかりとはなりましょう。