ようこそ「岩瀬文庫の世界」へ
1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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芸藩土産図
江戸時代中期写

8代将軍徳川吉宗は、実践的な改革や厳しい質素倹約令を敢行し、傾きかけた幕府の財政を立て直した名君として知られます。その吉宗が推進した事業の一つとして、享保20年(1735)の「諸国産物調べ」があります。各大名を通じて、全国の産物、つまり地域で産出する動植鉱物を実地調査し、絵入りの詳しい報告書を提出させたのです。吉宗はこの報告書を、諸国の殖産振興の基礎データとしようと図りました。今風に言えば、「ご当地ブランド」の掘り起こしを企画したといえましょうか。

さてこの本は、その命令を受けて、安芸・備後両国を治めた浅野家家中、広島藩で作成された報告書の控えです。幕府へ提出した原本は江戸城の火災により全て失われており、こうした藩に残った控えは、この産物調査がどのようなものであったのかを、また当時のその地域の自然環境を知ることのできる、貴重な資料となっています。

しかしこの資料、面白いのはそればかりではありません。なんと報告データに改ざんの跡が見られるのです。例えばこの「ひいたか」。ハイタカやハヤブサなどの小型の猛禽類をさす広島地方の方言ですが、絵に別の紙が貼り付けてあります。本物のひいたかは鋭いくちばしや鍵爪など、いかにも猛禽類といった趣ですが、別紙に書かれた姿は細い枝に弱弱しくとまった小鳥のような姿です。そしてそこには、幕府と浅野の殿様に提出した報告書にはこの姿で書いたとの注記があります。いったいなぜこんな改ざんをしたのでしょう?