ようこそ「岩瀬文庫の世界」へ
1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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耕稼春秋
宝永4年成立・江戸時代後期写
直心著

 本書は、直心なる加賀国石川郡の人によって書かれた、稲作を中心に農家の仕事を正月から月を追って解説した農業手引き書です。5冊構成で、1・2巻はカラーで描かれた農作業図集、3~5巻は本文編になっています。本文編では作業手順から諸注意、農機具の説明などまで、詳しく丁寧に解説されています。

お正月も4日になると、農作業の準備が始まります。もっともこの頃は旧暦ですから、今の暦に当てはめると2月の初旬頃にあたります。以降紹介する月は、現在の感覚ならば+1ヶ月と考えてください。2月には田起こしをし、3月には苗代を作り、と同時に畑に豆や雑穀、麻、野菜などの種を蒔きます。
4月に入ると田に肥えを入れ、中旬にはいよいよ田植えです。山間部では春の焼畑が始まります。村中の田植えが終わると、1日お休みです。
5月は菜種や麦の刈り入れ、田や畑の世話に忙しい毎日です。
暑くなってくる6月には、毎日草取りが欠かせません。また麻や萱の刈り入れ、瓜や茄子などの収穫を行います。7月には早くも早稲の稲刈り。畦の草取りや枝打ちもおこたりなく。粟の収穫も始まります。8月には稗の収穫です。そして毎日草刈。氏神様のお祭りも行います。
9月。いよいよ稲刈りです。人々が総出で、夜になっても刈り入れます。一段落付くとみんなでお祝い。刈り取った稲を干して取り集め、落穂を拾い、残らず蔵に収めたら一日お休み。雨の日は稲こきをし、籾をとり、お米を俵詰めにします。
10月には町へ出かけ、来年の農作業に必要なものを買い集めたり、畑でとれた蕪や大根を市へ売りに行きます。年も押し迫ってきた11月、お米を計って年貢俵をととのえ、城下のお蔵へ運び入れます。そして12月、年貢を納めた領収書である皆済状を受け取り、来年の支度をしながら静かな暮を迎えます。