胴人形肢体機関
寛政12年版
曲亭(滝沢)馬琴著の黄表紙
この本は江戸時代後期の代表的な戯作者・曲亭馬琴(きょくていばきん)によって書かれ、寛政12(1800)年に刊行された黄表紙です。黄表紙とは、江戸時代の中期から後期にかけてのわずか30年ほどの間に爆発的にはやった大衆文芸で、黄色い表紙がついていたことからこの名があります。大きな挿絵と奇想天外なストーリーを楽しむという現在のマンガを思わせるこれら黄表紙を、人々は大いに愛好し、その屈託のない笑いに興じたのでした。
物語の語り手である人相見の教訓先生は、体の特徴は心のありようの顕れであるとして、こじつけめいた教訓をたれます。例えば「団子(だんご)っ鼻」。うまいお世辞を言って人を喜ばせたり丸め込んだりすることを「団子にする」と言うそうですが、こういう人は自分の鼻をツンと高くしたりしないので団子鼻なのだ、と解説します。そしてそこには鼻の部分に串団子をくっつけた女性の挿絵が…。この調子で次々と教訓先生のダジャレのような〝ご託宣〟と、そのまま言葉通りに描いた滑稽な挿絵が開陳されます。