ようこそ「岩瀬文庫の世界」へ
1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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往来本雑聚
江戸時代版

 書名にある「往来」とは往来消息=往復書簡の意で、元々は手紙のやり取りの形式で記した模範文例集のこと。その起源は平安時代にまでさかのぼり、文章の書き方や、美しい文字を習得するためのお手本として使われたものです。やがて様々な分野の基礎知識を伝えたり、文字や用語を学ぶテキストへと発展し、「往来物」と呼ばれる一大ジャンルを形成するほど実に多彩なものが作られるようになりました。江戸時代には印刷出版技術の発展ともあいまって、7000種類を超えるとも言われるほどの往来物が作成され、明治に西洋式の学校教育制度が導入されるまで、初等教育用の教科書・副読本として我が国の庶民教育に大きな役割を果たしました。

江戸時代に印刷された往来物は、たいてい小本と呼ばれる半紙の四分の一くらいの大きさで、1冊10丁ほどの手帳サイズの小冊子です。本文は読みがなつきの堂々たるくずし字で書かれ、漢字にはルビがふってあります。これらをお手本にして、子どもたちは繰り返し字を書き、また音読して読み方を覚えます。と同時に、書かれている内容や語彙も身につけたのです。また、頭註と呼ばれる、本文の上の部分に、豆知識的な解説がついているものも見られます。言葉をならう教科書としての機能プラス、副読本や辞書としての役割も併せ持っている便利な本です。