榴弾私説
嘉永6年成立(無刊記)
殿岡北海/著
奥書に記された年号、嘉永6年は、ペリーが黒船を率いて浦賀に訪れた年です。7月にはロシア船も長崎に来航しています。幕末、アジアに押し寄せた西欧列強の武力侵略は、それまで平和と繁栄を謳歌していた日本を、にわかに緊張させました。本書はそんな時代に書かれた、攘夷のための秘密兵器の解説書です。
表題の榴弾とは、著者である国学者の殿岡北海が考案した陶器製の手榴弾のことです。ライフルや大砲などの重火器類で武装した西欧諸国に対抗するため、直径2寸5分(約7.5cm)の中空の陶器の中に火薬を詰め、導火線に着火して敵軍に投擲するというもので、西洋の鉄製榴弾にヒントを得て考案したものだといいます。