ようこそ「岩瀬文庫の世界」へ
1話3分、知の探検。
Iwase Bunko Library was established as a private library in Nishio city.
Yasuke Iwase, a wealthy merchant, used his own funds and opened IBL in 1908.
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一天地六偽咄
安政2年成立・明治写
世界庵無物

 書名の「一天地六」とは、サイコロのこと。すなわち本書は、サイコロ賭博のあれこれについて記した本です。
出目の符牒の一覧に始まり、賭博の起源や丁半バクチの心得などといった実践的な記事から、偽咄(フィクション)仕立てで語られる様々なエピソードまで、12項目にわたってさいころ賭博をめぐる諸事が、漫画風の挿絵を添えて記されます。

賭場で褌一丁までひん剥かれてしまった男の話、中年以降に博打にハマり、いつか大当たりを出せるはずと甘い夢を見る博奕打ちの話、おかみさん連中やお店の丁稚さんなどを素人バクチに誘い込み、小ずるくテラ銭を巻き上げる男の話などなど、滑稽風味のフィクションながら、妙なリアリティと凄みが漂います。

現代も賭博は違法行為ですが、江戸時代も同様に天下のご法度で、捕まったら島流しになることさえある重罪でした。よって本書のように始終一貫して博奕に関する事柄を書いた本は、大変珍しいものです。安政2(1855)年、世界庵無物という人によって書かれました。もちろんペンネームで、作者の特定はできません。