節分及正月行事図
江戸時代後期
中条直右衛門著
節分は立春の前日に行われる全国的な行事で、邪悪なものの象徴である鬼を、豆をまいて追い払います。邪気を祓い、清らかな新年を迎える宮廷の大晦日の行事・追儺(ついな)が起源です。本書は節分の豆囃子役(まめはやしやく)(豆まき係)を代々仰せ付けられた中条直右衛門という武士が、文化12年(1815)に、節分やお正月の諸行事で用いるや飾りや献立などを絵入りで詳細に記録した資料です。
節分の朝、直右衛門は4時ごろに登城し、その年の年男の武士とともに豆まきにとりかかりました。三方に盛った炒り豆を三粒ずつ、恵方(えほう)に向かって「福は内」と声高に囃しながら2回、次に鬼門に向かって1回「鬼は外」といいながらまくのだそうです。
主君の家族らの居間にすえる豆飾りも作成し、お傍仕えの者に渡しました。豆飾りは三方の上に長のしを2本敷き、その上に炒り豆を盛った升を置きます。豆の上には鬼よけの柊包みが載せられました。柊包みは、その棘で鬼を追い払うという柊の小枝、やはり匂いを鬼が嫌うといういわしの頭、それと豆がらを紙でくるみ、殿様がたの分は青白の水引で、お姫様がたの分は紅白の水引で結ぶのだとあります。