と古し南へ(とこしなへ)
元治2年
正木梅谷(著)・貝谷春濤(画)
題名の「とこしなへ」とは、「とこしえに、永遠に」という意味。過去から現在、そして未来へと、営々と繰り返される新年の訪れの情景が、名古屋の熱田のかいわいの風物を中心に、生き生きと描かれています。元治2年(1865)に、熱田に住む画家・貝谷春濤(かいたにしゅんとう)が絵を描き、尾張藩の儒学者・正木梅谷(まさきばいこく)が文章を寄せています。
例えば、活気に満ちた市場町の「年の市」のようす。門松のための松や竹を運ぶ人、お正月飾りを求める人があわただしく行き交っています。
新年を迎えた神戸町(ごうどちょう)駿河屋の店先。江戸時代の門松は、葉の付いた背の高い竹と、これまた葉の茂った松が目立つ、現代とは違った形です。年始回りの合間に知り合いに行き逢ったか。道で深々と頭を下げあう人。右端には三河万歳の太夫が左上の鼓を持った才蔵を手招きしている。
熱田神宮の正月5日の初えびすには商売繁盛、家内安全を祈る庶民が、お札や縁起物を求めて集まります。現代と変わらない風景です。
新年を祝い、幸多からんことを願い、そして一つ一つの歳時を楽しむ、そんな当時の人々の熱気が主役の画集。